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実践1

何なんだ! そんな簡単な・・・

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写らないんです(炭素循環農法の作物はカメラを騙す?)

M.H 農園 ジャガイモ  M.H 農園、アヒル殺し氏のジャガイモ畠です。それにしてもひどい露出オーバーですね。きっとカメラマンの腕が悪いとお思いでしょう(笑)。言い訳するわけではないのですが違うのです!!!。実は・・・、炭素循環農法の作物はカメラを騙す?のです。

撮影は晴天の午後、太陽は背後左45度、普通なら絶好の撮影条件の筈なのですが・・・。この晴天というのが曲者で、今時の全自動のカメラでは、このような写真になってしまいきれいに写らないんです。遠景の林の木々も露出オーバーです。直射日光下での撮影では絞りを手動に切り替え二つほど絞り込んで撮影しないと適正露出にはなりません。これはプロのカメラマンでも最初は騙されます。

考えられることは偏光の違いではないかと思います。一般の葉と違い、乱反射率が相対的に低く、それが露出計の感光域内であるため、露出計は暗いと判断し絞りを開きすぎてしまうようです。詳細は分かりませんが、葉面組織の構造の差によるものと思われ、直射日光のような強い光では、葉面の反射率や透過率、偏光程度の差が大きくなるのでしょう。

興味深いことに、虫はヒトが感知できない偏光の違いを見分けられることです。不要な能力を持っているとは考え難く、虫は遠距離からでも容易に食べられる植物を見分け飛来してくるようです。また根から吸収した、腐敗物質や硝酸などの臭いや味でも識別・選択し、ウンカは緑の濃い水田(窒素が多く腐敗成分の吸収も大)に集まると言われます。知覚能力の鈍ったヒトは誤魔化せても、虫は誤魔化せないということです。
偏光: 光の進行方向に対し直角に、上下や左右の直線偏光(グラフでは波)。さらに時間経過と共に方向が変われば円偏光(3Dグラフでは螺旋)。同時に規則正しく強度変化すれば楕円偏光。
偏光の識別: ヒトの眼は光の強度と色だけで偏光を識別できない。ヒトは偏光子を通して見なければ、偏光を感知できないが昆虫の複眼には、敏感な視覚細胞が多方位に規則正しく集合していて、特定の偏光方向に対する識別能力を持つ。

S.M 農園 レタス1
他の作物でも同様に露出オーバー現象が起きます。右の写真は S.M 農園のレタスです。同じカメラで薄曇の夕方に撮影したのもです(薄日の太陽は左少し前で僅かに逆光気味のため絞りが絞られ遠景の林が黒くつぶれています)。このように強い直射日光が射さない朝夕か曇天の条件では普通に写ります。

このレタスは葉が縮れていて日本では見かけない品種(暑さに強い)だと思います。畝間(緑の濃い所)は緑肥用のエンバクです。毎作ではありませんが緑肥の混作です。同一圃場で年5回前後のレタスの連作ですから緑肥を作る期間がないため混作しています。これは緑肥としてだけではなく、夏(雨季)は太陽の直射から表土を守り有機物の分解を防ぎ、冬(乾季)は表土の乾燥を防ぐ役目もしています。
何故、年5回も連作するかというと、経済的理由もありますが炭素循環農法を始めて1年余りのここでは土地を早く良くするために回数を増やしているわけです。土を良くするためには微生物の力を最大限に発揮させ作物自らが自分に合うように変えていかなければなりません。
S.M 農園 レタス2
左は曇天の撮影にもかかわらず太陽を背(右後ろ)にしているため少し露出オーバー気味です。これは日本でよく見かける系統の品種のレタスです。ここでは冬作向きの品種で夏は作り難い品種ですが炭素循環農法では年間を通してほぼ同じように栽培可能です。
畝間にあるエンバクと雑草はレタスの収穫時にはかなり繁茂し雑草の中にレタスが埋もれている感じになります。雑草は作物に覆い被さらない限り害はありません。作物の残滓や根部と共に次作の大切な微生物の餌となります。

以前、慣行農法の大農場に行った時のことです。トラクターが大きなタンクを引きながら雑草の中を走り回り何やら散布しています。聞いたところ除草剤を撒き草を枯らした後、耕起するのだそうです。この辺りは気候温暖で一年中雑草が伸び2ヶ月も放置すれば藪になってしまいます。それを鋤き込んでもなかなか分解せず邪魔になるという話です。
帰り際にニンジンを一本貰い何時も味見している時と同じように生のままかじってみました。一瞬甘いなと感じたまでは良かったのですがその後が大変でした。何とも嫌な味がするのです。慌てて吐き出しましたが既に後の祭り、1時間ほど舌にその味が残り酷い目に合いました。後ほど分かってきた事ですが、土壌中の腐敗物質を作物が吸い上げたためで、要するに腐敗味です。この味は作物に関係なく皆同じです。

高価で環境破壊の一因と目されている除草剤で手間暇かけ有用な有機資材を枯らすなんて何とも勿体ない話です。炭素循環農法では休閑期が取れれば緑肥を撒いておくか雑草を生やしておきそのまま鋤き込みます。
ところで、緑肥を蒔くと輪作で連作とは言いません。しかし雑草を放置しておいて同じ作物を作れば連作と言います(笑)。
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虫を害虫にしているのは人(虫は全て益虫)

M.H 農園 アリ  右の写真は定植まもないナスとハキリアリ(サウーバ:葉を巣穴に運びカビを栽培し食物としている蟻)の巣です。従来農法の圃場でこれほど立派な(笑)巣があれば、一晩で小さな苗は一本残らず巣穴の奥に消えています。
慣行農法では毎作ハキリアリの駆除をしてから播付けします。どんなに殺しても時期がくれば一つの巣穴から夥しい数の羽アリ(将来の女王アリとオスアリ)が飛び立ち周囲一帯に無数の巣を作ります。もし放置したままで播付けをすれば収穫はゼロと思わなければなりません。
ところが、ここの蟻は絶対に作物の葉を運ぼうとしません。彼らは過去に一度は運んだ筈です。そして学んだのですね。ここの作物の葉はカビが生えないことを。ハキリアリの防除に一時ゴマが良いと言われ混作されました。巣穴に運んだゴマの葉が発酵しアリの栽培しているカビを殺してしまうからです。ところが一度酷い目に合うと彼らは同じ失敗は繰り返しません。

ここでは雑草を巣穴に運びカビを栽培した菌床や排泄物を微生物の餌にしてくれています。また巣穴をあちこちに開け他の微小生物と共に土壌の通気性等の物理性を改善してくれる大切な存在なのです。
他の害虫といわれる虫たちも同様です。例えばここのアブラムシは作物など見向きもせず雑草に取り付き枯らしたり、その成長を抑制してくれます。ですから、そんな有難い彼らを殺すなんてとんでもない話です。人は勝手に害虫と呼んでいますが人が彼らを害虫にしているのであって、彼らは初めから害虫でも益虫でもありません
炭素循環農法では虫を一切殺しませんから、転換初期だけは多種多様な虫がいます。これらの虫は全て益虫なのです。しかし一旦、作物を弱らせればたちまち害虫へと変身します。病原菌といわれるものも同様です。作物が弱り不健康となって初めて病原菌として作用します。土壌の浄化・肥沃化が進めば虫の役目はなくなり消えます
緑肥(エンバク) エンドウ ハクサイ
左から緑肥(エンバク)、エンドウ、ハクサイです。
エンバクは鋤き込み直前です。殆どの葉野菜は栽培期間が緑肥より短期間ですから緑肥の種が稔っても雑草化の心配はありません。緑肥はイネ(禾本)科の植物が炭素量が多く土壌改良効果が高くより効果的です。

エンドウは寒い季節のものですが真夏以外は栽培可能となります。ハクサイも同様です。外葉に虫食いの穴が僅かに見られます。無農薬でも植付け初期に少し虫がつくだけです。最初から全てを取ろうなどと欲張ってはいけません。程ほどにしておきましょう。人が食べない外葉は虫に食べて頂きましょう(笑)。彼らは必ず何倍にもして返してくれます。
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勘違いで結果良し(高炭素資材の活用)

勘違い氏のレタス  見事なレタスですね。これは炭素循環農法を知らなくても自然の摂理(手抜き理論)通りにやっている例で、葉物中心に栽培する超大型農場(240ha)の圃場風景です。
ここでは高炭素資材(木材チップ)の堆肥マガイ(堆肥舎が足りず2週間堆積)しか使いません(PH調整の石灰も)。堆肥マガイは水分が少なく2週間では全く堆肥化(肥料化)していません。

農場主は堆肥(肥料)のつもりで使っていますが生の木材チップ(C/N比は積み込み時に鶏糞等で調整)による土壌改良の連続で、結果的に無肥料、無堆肥、無農薬の炭素循環農法の基本に則っています。炭素循環農法は何も雑草や緑肥(餌)だけでなく、自然の理に従えば何を使っても構いません。いや寧ろ手近にある物を活用すべきでしょう。
堆肥マガイ 左は浅く耕起し畝立て後、堆肥マガイを撒いたところです(6ton/ha)。この後軽く掻き混ぜ2〜3週間後に定植します。生育半ばで堆肥マガイを追肥(のつもり)で表面に撒きます(2ton/ha)。これは全ての野菜(約20種類)に共通でPH調整もしません。

慣行農法の追「肥」という考えから2回に分けて投入していますが高炭素資材の分解速度から考えて植付け前に全量投入した方が省力的です。特にリグニンを多く含む木材は分解が遅く生育後期に微生物の働きの衰えから養分不足を起こす懸念はありません。

植付けから収穫するまで補助的に糖の発酵液の葉面散布(1回/週)をしていますが作物にストレスの多い真夏以外は必要ないように思われます。後は必要に応じ除草をする程度です。
10年ぶりに天地返しした土壌深部の状態から見て(排水の悪い極一部に腐敗や硬化が見られる)もう少し経てば葉面散布は不要でしょう。また天地返しは土壌の劣化を一時的に外力により改善する対症療法的なものです。微生物が機械力も及ばない深部まで柔らかく耕すようになれば意味の無い作業です(寧ろ害になる)。

勘違い氏は慣行農法、生ゴミ農法、EM農法を経て現在の方法に辿り付きました。化学肥料主体で有機物不足から土壌の物理性が悪化。生ゴミで有機物は入れたものの窒素過剰と炭素不足からまたもや土壌劣化(硬化、腐敗、硬盤層形成、排水不良等)に拍車をかけ、駄目押しにEM菌(ボカシ)が残り少ない有機物を食い尽くしました。

これで作物に健康に育てと言っても無理な相談です。EM菌は微生物ですから餌(炭素資材)が無くなれば何の役にも立ちません(指導者側の問題)。ボカシに含まれる炭素資材程度で足りる筈はなく、2年目には殆ど収穫できなくなり、病害虫の見本市の感を呈していたそうです。最悪の条件から始めたわけですが、これはアヒル殺し氏、前出のレタスの S.M 農園も似たようなものです。
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人農法(隣は何を・・・)

ごっちゃ作  有機栽培の生産者が近辺にいない場合、野菜の自家販売をすると種類を増やし品揃えしないと消費者の要望に応えることができません。炭素循環農法に転換して6年目の前出のレタスのS.M 農園の状態です(2003年5月現在)。
消費者の欲しがる物を次々植えているうちに、右の写真(7種類ほど写っている)のような混作状態になってしまいました。結果的に常時50種類、季節変動があり全70種類ほどの蔬菜類を栽培しています。こうなると植えた本人でも何処に何が植わっているか分からなくなるほどです(^-^)。

土ができれば、このように人の都合を優先させて構いません(写真の状態では、まだ70%程度のでき)。栽培期間や販売量に応じて植えるため、トラクター幅の畝に3種類ほどの野菜が植わることもあり、種類毎の施肥、防疫、野菜の相性や作付け順序、連作など気にしていたらできることではありません。実際に植えるまで次の作物も、隣は何を植えるか、やっている本人でさえ確かなことは分かりません。
特に有機農法で推奨されている、数年から10年以上の計画的な区画割り・輪作は土さえできれば無用な努力であり、土作り(環境整備)の意味を理解していないと言えます。

土壌成分の推移(mg/100g)
 pH腐植 %全N %PKCaMg仮比重C/N比CEC meq
1997年(転換時)5.14.20.122212164170.6320.316.5
2000年(3 年目)5.74.00.11319213210.8821.1 
日本の平均値(畑)6.05.20.252045 70 12.1 
推奨値(有機農法)6.05.0 2018300481.00  
充足率% 2000/推奨値 80 155507144   

 かなり低い養分レベルです。3年目でほぼ病害虫がなくなり、何でも育つようになりました。転換前は有機堆肥農法です。転換後、腐植が減り仮比重が高くなっています。現在は雑草や緑肥作物とキノコの廃菌床だけで、微生物資材やCa源等の資材も一切使っていません。
高炭素有機資材を投入しても、微生物の活動が盛んなら食べ残しである腐植は減ります。腐植が多く土がフカフカでミミズ等が多い状態は、微生物の働きがまだ不十分です。フカフカは土壌中の有機資材の処理が完全にできていない証拠で、清浄度が低いことを意味します。

C/N比(腐食×0.58/全窒素)は施肥栽培畑の平均よりかなり高く、これは森林の平均的な値、20前後と同じで腐敗し難い土壌です(土壌のジャングル化)。全窒素量は慣行の半分以下で、これも自然林(0.1%前後)並み。そして、ほぼ全量が生きている窒素です。転換時からのC/N比には大差はありませんが、清浄度が上がり供給力は十分。窒素不足はありません。

圃場と分析データを見て「このままでは何もできなくなる」と、農業技師や農学者に言われ続け、更に3年経過しています。彼らの言うことを聞かず、相変わらず「何もできなくなる」と言われながら、ごちゃごちゃと何でも作っています(^-^)。現在では養分や病害虫のことなど全く意識する必要がありません。
『彼らの言うことは絶対に聞いてはいけない』という忠告を忠実に守ってきた賜物です。彼らが間違っているというのではありません。ただ、彼らの常識は慣行的な施肥農法の範囲内では正しいと言えますが、あくまでもその範囲内でしか通用しない常識です。有機堆肥農法の常識も同様です。

それから、何も目新しい技術や知識があるわけではありません。全て現在の科学の範囲内で知られている既存の知識です。でも、起きている事象の捉え方が違います。捉え方が違えばやることも違います。今までの常識を全て正反対にすれば、正反対のことが起こり、不都合は好都合に変わります。但し、半端なこと(自己流=人基準)をすると必ず転換に失敗します。
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