転換4土もリセット
地球の皮膚と言われる土壌だが、農耕地は内側の皮膚(腸粘膜組織)に相当?。その再生には「リセット=進化の巻き戻し」が効果的(再生医療と同じ原理)。地球生態系は5回のリセット(大量絶滅)を経ている。
初期化は発酵へのワープ土作りは土壌微生物の進化過程の再現、土壌生態系の再構築です。ところが土壌環境の改善だけで微生物相(叢)を変えようとしても、今の環境に適応し出来上がっているものは簡単に変わらず3年前後の期間を要します。短期間で一気に変えるためには、環境を激変させ土壌微生物相を一旦「リセット=進化の初期化=陸に植物が進出した時点への巻き戻し」をします。戻すと言っても過去には戻せません。未来を基準に=今をこれから現れる事象に合わせます。 リセット処理
通常は起こりえない過酷な環境で死ぬものは死に、腐るものは腐ります。しかし、残った難分解性有機物を餌に、短期間で微生物は活性化し(最初に菌類)、地下生態系が再構築されます(米糠除草も腐敗作用の応用で似ているが発酵作用を伴わず×)。
最初に菌類:
化石から判明していることは 6500年前、巨大隕石が衝突し大量の塵で日光が遮られた暗黒の中で植物は枯れ、その後地表を覆い尽くした生物は殆ど光を必要としない菌類であった(キノコ、胞子の形成には光を必要とするものも多い)。 主たる目的は腐敗耕盤層を消すこと(団粒化)。結果さえ出せれば、たとえ慣行の防除技術であっても良いのです。生かすためなら何でもあり「使えるものは何でも使う」「人が善悪を決めない」。自然教徒には×××・・・の強引で荒っぽい技術。しかし内実は・・・。
慣行の防除技術:
結果さえ出せば: 土壌団粒化が行われる発酵環境下では菌類(糸状菌=カビ)による病害やカビ毒(マイコトキシン300〜500種類)の害は出ない。逆(腐敗)の環境下ではカビ病、カビ毒素の害が表面化する。発酵、腐敗どちらでも生物活性物質(毒にも薬にもなる)が産生されるが、有用なもの(生理活性物質:生体に本来存在し生体のために役立つ物)であればよい(土壌も一種の生体として機能)。 確実に処理すれば、強烈な腐敗作用(腐敗ガス・成分)のため雑草の種子、センチュウ、病原菌などほぼ全てのものが死滅します。生きていた微生物を含め土壌中の「腐る物を全て腐らせてしまえば当分の間、腐敗は起きようがない」。「あとは発酵分解があるのみ」という単純な原理。 無差別に微生物を殺しても心配には及びません。フィルムを剥がす前に、糸状菌(カビ)が繁殖しています(画像左上)。また、処理(被覆)中でも草が生えます(画像左下:処理温度の不足の失敗例)。
「太陽熱」だけの:
主作用は腐敗。陽熱処理の改良版では30℃あれば効果が上がる。つまり単に「太陽熱」だけの作用ではない。腐敗が終われば発酵型土壌になり、短期間で土壌物理性が改善される。5腐敗(死)→4再発生→2活性化→6安定化という循環。 ポイントは「5腐敗(死)=リセット」。太陽熱処理は技術的には難しくはありません。しかし命の循環の仕組みを応用した矛盾のない高度な技術です。
太陽熱消毒、陽熱処理、陽熱・還元法、土壌還元消毒、(“たんじゅん”ではかもマルチ)等と呼ばれている。1970年代イスラエルで開発された(初の文献:1976年 KATAN ET AL.)。土壌病害虫(フザリウム=カビ、センチュウ、ダニ等)対策として、薬剤(臭化メチル[オゾン層破壊]、クロルピクリン等)による土壌消毒に替わる技術として注目されている慣行栽培の技術( ネット検索)。
陽熱・還元法改良版(+糖質=米糠、糖蜜0.6%液等。+低濃度エタノール=1%液。+湛水。+石灰窒素100〜150kg/10a 等)は、より低温で処理可能。何れも原理は同じで高温や極度の還元(酸欠・腐敗)による殺菌(虫)作用。方法により高額な設備や大量の水、資材を必要とするのが欠点。石灰窒素は肥料、農薬(シアナミド:劇物)の二面性があり販売・使用禁止の国もある。類似の加熱処理として蒸気や熱水処理もある。 原理と効果
陽熱処理でも技術的には“人”は一時的に環境を変えるだけ。その処理過程で現れる土(微生物群)に対する強力な選択的、半殺し効果がストレス負荷となり再生が行われます。
半殺し効果:
生き物は死に瀕すると自ら生きようとする力、子孫を残そうとする力を発現する。応用例は多く、何らかのストレスをかけることにより、その力を引き出す。 ◆応用例:開花処理、催芽処理、発芽・発根処理、剪定処理、強制換羽、再生医療、等。 ◆ストレス:日光、冷・熱、乾燥、紫外線・放射線、塩、石灰窒素、薬剤、断水、断餌、無酸素、根や枝葉切断・樹皮の剥離等。 再生: 殺し医療(対症療法)と再生医療の違いは「邪魔者=悪者は問答無用、全て完全に消(殺)せ」と、少し手助け(環境を変え初期化)するから後は「自ら勝手に生きろ」治す治さないは本人次第。 現れる現象は、発酵→高温→酸欠・腐敗→温度低下→再発酵→団粒化進行→耕盤層消失。その意味は「初期化→再生→活性化→安定化」です。 表層土を高温・還元状態(処理深度:最大60cm)にして一旦、バクテリア(高温に弱い)や菌類(高温・酸欠に弱い)を一時的に減らします(半殺し)。たったそれだけなのに・・・「あら不思議?」まるでスタップ?。20cmしか入らなかった貫入式土壌硬度計(たんじゅん棒)が片手でスッポリ1.5m以上も入るようになり、効果は絶大(画像:右)。
スッポリ1.5m以上:
殺菌技術とは言っても皆殺しなどできはしない。一時、強烈な腐敗状態となるが処理終了時のフィルムの下には菌類のコロニーが見られ、発酵型・微生物相に変わり団粒化が進行していることが分かる。上層から下層の各層の条件に従い、光合成菌や好熱性菌群、好気性菌群、嫌気性菌群が働く。これら全ての菌群が居なければ成果は上がらない。腐敗型微生物も死滅したかのようにみえても土壌環境が悪くなれば、たちまち復活し虫の餌と化した作物を処分する。 同様に腐敗耕盤層を消す技術に、「腐敗硬盤層の土スープ(生物的にはほぼゼロ?)」を使う方法があります。畑で直接、土スープを作るのが陽熱処理。原理的には、ほぼ同じと考えられます。 ただ、土スープ法ではリセット処理をしないため確実性に欠け、数日で元に戻ってしまうことがあります。利点は慣行栽培の機材で対処でき、ある程度の大面積でも可能、土スープも注目に値する技術です。
土スープ:
ヤマカワプログラム(講演ビデオ)。原理上、土壌微生物生態系を弱体化させない限り、一回限り(それ以上は効果がない=他に阻害要因がある)。 ◆ ヤマカワプログラム3点セット:増殖因子≠栄養素。腐敗硬盤層の土1kgに水10Lを加え30分煮沸、上澄み液(土スープ=熱湯抽出液:アメリカで開発された技術)を取り冷ます、土スープ1Lに酵母エキス1L、光合成細菌1Lを加え一晩寝かす。この3000倍液を 100L/10a 散布(雨前が良い)すると、硬く締まった硬盤に微少な団粒ができ、結合が緩み硬盤層が消え検土杖が刺さるようになる。成功率7割?、但し有機物、微生物が少ない畑では効果が上がり難い。 ※ 使用濃度から考えてホメオパシー(同質療法)効果と同じ原理?。同種要素(刺激、情報?)の付加による微生物の活性化。 1.腐敗層の土を煮出した液=各種微生物の分泌物や、加熱で不活化しない好熱菌群(至適生育温度が45°C以上、あるいは生育限界温度が55°C以上の微生物、またはその総称。古細菌の多く、真正細菌の一部、ある種の菌類や藻類が含まれる。特に至適生育温度が80°C以上のものを超好熱菌と呼ぶ)。 2.酵母エキス(生活環の一定期間において栄養体が単細胞性を示す真菌類の総称) 3.光合成細菌(光合成を行う真正細菌の総称)。 ※2.と3.は、山川氏特製:菌の出現時に近い栄養環境で培養・初期化したもの(入手に難点あり)。 土スープでの効果を考え合わせると、陽熱処理時の過酷な環境下でも働く微生物(古細菌)の活性化がもう一つのポイントかと思われます。 勿論、他の微生物も必要で病原菌から腐敗に関わる菌、日和見菌、何をやっているか分からない無用菌?(窓際菌)、有用菌まで多種多様な微生物がいないと、処理後の微生物叢(相)再構築に欠員が出て、不安定なものになると考えられます。
古細菌:
生物は3つに大別できその内の一つ、病原性を持つ菌は見つかっていない。過酷な環境(無酸素、超高温・酸・塩)に適応したものが多く、自然環境に大きく関与していると考えられているがメタン菌以外、土壌中での働きは殆ど知られていない。 土は微生物、植物の家。掘っ立て小屋ではなく豪華マンションの建設。最初は基礎を作るために掘り返し杭を打ち込み大量のエネルギー(資材、人材等)を要します。しかし完成すれば維持管理と住人に必要なエネルギーだけ、時期が来れば余計な資材は不要。作業(活性化)も障害となります。 “おまじない”効果として、最後に残る好窒素植物といわれる草(シロザ等=野菜)が消えます。「窒素循環量が多い野菜向きの土に野菜が生えるのは当たり前」とは言っても・・・邪魔。こぼれ種や芽をだす根株を起こして枯らすのと同様に消えてもらいます。ついでに頭の雑草も・・・嘗ては主要技術・知識、でも今は邪魔な雑草?。どちらも消したからといって防除(殺し)技術のようなマイナスの事象は見られません。
シロザ等=野菜:
進化程度の低い(出現時期の早い)植物は団粒化・肥沃化で消え、逆のもの(シロザやアオビユ、ハキダメギク、カタバミなど)は増える。シロザ(ホウレンソウと近縁)は雑草扱いだが嘗ては栽培種で、今でも野菜・ハーブとして食されている国や地域がある。ヒユも同様。 後遺症?環境改善と微生物の放し飼いによる転換初期の2〜3年分を、1回の処理で一気に飛び越します。技術的には簡単ですが多くの要素が含まれ、理解には「物の科学」以外も含めた総合的な知識が必要。一通り理解すれば炭素循環農法の核心部分が分かったも同然の技術です。
例えば団粒程度を把握できず不適切な水管理で後戻り(硬盤層再形成)。米糠、畜糞などの継続使用で味に影響がでるなどです。
米糠、畜糞などの継続使用:
陽熱処理では腐敗過程を経るための腐敗促進資材を必要としますが多用、連用は要注意。肥効成分(硝酸態窒素)として残れば実質的な施肥栽培。 味に影響: 処理中の腐敗過程で肥効成分が少し残っても、団粒化が進行しているようならあまり問題は起きない。また、多く残った場合でも気候に恵まれ、水管理が適切なら腐敗(病虫害)は起きず、作物の成長、外観とも良いが、硝酸態窒素のためうま味が足りず味が落ちる。似た現象が腐敗がない水耕栽培。見かけや収穫後の日持ちは良いがうま味のない無機的な味になる。 一回で、ほぼ潅水不要の土になっても頭の方が・・・。早く土に追いつくためには先ず、団粒化スピードに合わせた水管理(水の断ち方)を覚える。これは初歩の初歩、茎葉類なら、これだけで何とかなります。 水やり3年(10年)と言われますが、生き物相手(特に果菜類や果樹、花卉、家畜)には、更に経験を積み管理技術(肥培・防除管理は無い)の習得が必須です。
生き物相手:
10年 義務教育過程。 20年 高等教育過程。 30年 専門教育過程。 40年 なんとか一人前、何が「解っていないか」分かり始める。 50年 ベテランの域、めでたし卒業。 これが生き物を相手にするということ。同じ生き物でも己のことは・・・。 画像(左)に見られる差は、単に経験年数の違い。両者とも人の言うことはきかず、自然の言うことを聞いています。 尤も初心者は、人の言うことを聞いても理解できませんから、結果として自然から教わるしかないのです。これが「後の者が先になる」「新しい者が先生」です。 トマト栽培者は「人に教えることはできない」「毎年やることが違い次は何をやるか自分でも分かっていない」。これが自然から教わるということ。その自然とは未来側(自分でも分かっていない)なのです。
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